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大下容子アナ、冠番組の重圧とやりがい

大下容子アナ、冠番組の重圧とやりがい「辞めさせてください」と“直訴”したことも
12/29(水) 7:00 Yahoo!ニュース 84

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テレビ朝日アナウンサー・大下容子さんが明かした冠番組の重圧とやりがい

いつも変わらない穏やかで落ち着いた物腰が印象的な、テレビ朝日アナウンサー・大下容子さん(51歳)。『大下容子ワイド!スクランブル』でメインキャスターを務める“お昼の顔”だ。昨年、役員待遇エグゼクティブアナウンサーに昇進したことでも注目を集めた大下さんに、長年週に5日(15年間は6日)の生放送をこなす毎日の苦労や喜び、そして50代になった自分との、仕事の上での向き合い方について語ってもらいました。

1日1日最善を尽くすことを重ねていく

「人生100年時代といわれて久しいですが、中長期的な視点などは全然ないんです。先のことを考える余裕がなくて。今日や明日の仕事のことなど、とにかく1日1日、最善を尽くすことを重ねていくしかないと思っています」(大下さん・以下同)

画面を通して伝わる、穏やかで淡々とした印象は、実際にインタビューで対面しても同じだ。

大下さんは、1998年からお昼の情報番組『ワイド!スクランブル』を担当。俳優の大和田獏さんら3人のアシスタントを務めてきた。2018年10月からはメインキャスターに、さらにその半年後の2019年4月1日からは自身の名前を冠した『大下容子ワイド!スクランブル』を切り盛りしている。華やかだけど”短命”と言われてきた女性アナウンサーの中で、23年間も同じ情報番組でキャスターを続けられるのは異例と言える。

「ラッキーだったというか、同時間帯に『森田一義アワー 笑っていいとも!』(フジテレビ系)や『午後は○○おもいッきりテレビ』(日本テレビ系)という人気番組があったので、会社からそこまで期待されてなかったと思うんです(笑)。私自身、結婚や出産などもなく、ずっとフラットに働いてきたこともあったかもしれませんね」

「さりげなく働くほうが性に合っている」

局アナでありながら冠番組を持つのは、華々しいキャリアップに写るが、大下さんは当初、戸惑いしかなかったという。メインキャスターになって3か月が経った2019年初頭のことだ。プロデューサーから4月の改編時から番組名に大下さんの名前がつくことを“決定事項”として伝えられた。

「ありがたい話ではあるのですが、メインを任されて重圧を感じていたので、『これ以上一会社員に重荷を背負わせるんでしょうか。それは勘弁してください。番組を辞めさせてください』と、普段は“たたかわない”私にしてはかなり強く意思を伝えました。『私はさりげなく働くほうが性に合ってるんです』とも言ったのですが、『さりげなくやるような時間帯じゃないんだ』と返されて今に至ります。

確かに同時間帯の他局では、南原(南原清隆)さんや恵(俊彰)さん、坂上(忍)さんら百戦錬磨の才能あふれる司会者が活躍する中で、会社としても、違いを出すための策だったのかなと、今は思っています」

プレッシャーを感じて悩む本人に対して、周囲は意外な反応を見せた。

女性たちが喜んでくださったんです。コツコツやってきた人がそういうふうに評価されることは嬉しい、という同世代の視聴者からのおはがきや、アナウンス部の後輩、別の仕事をしている女性などが励みになると言って下さったので、これは意義あることなのかなと思いました

「役員待遇エグゼクティブアナウンサー」をスマホ検索!?

そんなふうに始まった冠番組での活躍は社内外で高く評価され、1年ほどたったのち、大下アナは「役員待遇エグゼクティブアナウンサー」という肩書きを得た

「会社からはアナウンサーの手本になってほしいというようなことを言われました。早い段階でフリーになったり、転職をしたり、結婚、出産、育休を取って復帰するアナウンサー、最近では男性アナウンサーも育休を取るなどアナウンサーの生き方も多様化している中で、こういうのもいるよということを、会社は示したかったのかなと捉えています

最初は役員待遇って何?と思って、スマートフォンで調べてみたのですがよくわからなくて(笑)。現場の声を上に伝えることだと解釈して、それは意識するようにしています。この役職になったからといって、何か新しい会議に出ないといけなくなった、ということもありません。お給料ですか? 上がりましたが少しだけです(笑)」

朝は4時起床、夜は10時就寝

番組は一部地域を除いて午前10時25分から放送開始だが、大下さんの朝はそれよりはるかに早い。

朝は4時ごろ起きて、熱めのシャワーでのど元や首のあたりを温めてから、5時過ぎに出社。メイクを半分くらいして、アナウンス部で一般紙とスポーツ紙を10紙ほど、その日扱うであろうニュースを中心にざっと読みます

6時前にはその日の台本がパソコンに送られてくるので、ニュースで扱う国の場所の確認から始まり、政治情勢、コロナの現況などを調べ、自分の中で何がわからないのか、何がニュースの核心なのかあれこれ考えます。その後スタッフと1時間ほど打ち合わせして、残りのメイクとブロー、衣装に着替えて本番です。

以前はこんなに朝が早くなかったのですが、どんどん準備に時間がかかるようになってしまって…。例えば今日(取材した当日)は英仏のホタテ戦争のニュースを扱ったのですが、英仏の海峡の場所やら、両国の漁の取り決めの歴史やら…。他のニュースもあるので2時間なんてあっという間。そうしていくうちに、もう15分早く出社しようかな、さらにもう15分…となって、どんどん出社時間が早くなりました」

ニュースのスピードはどんどん速くなっている

出社時間が早まる理由の一つに、ニュースのスピードが速くなっていることも関係していると大下さんは言う。

「前日のオンエア後には、翌日扱うであろうニュースを教えてもらうので夜に準備はできます。でもそのニュースが一夜明けると進んでいて、前日の情報はもう更新されていることも多くなったので、当日朝に準備をするようになりました。さらに年齢とともにどんどん早寝早起きになってきて(笑)。

夜は10時には寝たいですね。疲れてくる週半ばには9時頃に寝ちゃうこともあるので、後輩によく驚かれます」

女性として、自分としての視点を大切に

女性である大下さんの名前を冠した番組名とはいえ現場には男性が多い。20年以上前も今も、打ち合わせ時に女性は大下さんただ1人ということも多いという。

私から投げかける視点に聞く耳を持ってもらえない時期が、長かったです。でもお昼の番組は、視聴者の半分、いやそれ以上が女性ではないかなと。内容があまりに男性的視点に偏っているなと思う時は言いますし、生放送中もそれまで出ていないような見方を少しでも提示したいなと心がけています。それはいまだに難しいことなのですが、挑戦し続けることが大切だと思っています

50歳を過ぎると、人が喜んでくれることが嬉しい

50代になった自分との仕事の上での向き合い方、そして年を重ねて変わってきたことについて聞いてみると――。

50歳になった頃から、自分が嬉しいということよりも人が喜んでくれることの方がもっと嬉しくなってきたんです。例えば番組で着る衣装はスタイリストさんが準備してくださるのですが、放送後に、お借りしたメーカーさんのところに視聴者から問い合わせが入って、喜んでいらっしゃいましたなんて話を聞くと。自分がその衣装を着ることで、少しでも誰かの役に立てたのかなと思えてすごく嬉しいんです

自身の名前が番組名についてから来年で3年目になるが、ここまで続けてこられたのは支えてくれる周囲の人たちの声に応えたいという気持ちがあったからだ

スタッフや出演者みんなで協力して最善を尽くしたいです。それでだめならしょうがないと腹をくくって始めて、今は健康第一にできるところまでやっていきたいと思っています」

◆大下容子(おおした・ようこ)
1970年広島県広島市生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。血液型A型。身長:160㎝。1993年テレビ朝日入社、役員待遇 エグゼクティブアナウンサー。『大下容子ワイド!スクランブル』(毎週月~金曜、10時25分~13時/一部地域を除く)でメインキャスターを務める。『ワイド!スクランブル』は1998年から23年間担当。2021年10月、初エッセイ『たたかわない生き方』(CCCメディアハウス)を出版。

撮影/吉場正和 取材・文/田名部知子

by nigi-style | 2022-01-25 06:59 | 生き方考え方 | Comments(0)