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稀勢の里 男の美学

古いタイプの人間ですから、胸を負傷後の稀勢の里の苦しい胸の内は痛いほど察することが出来ます。

人一倍弱音を吐かない辛抱強い彼が、左大胸筋を損傷した時に「潔く引退するか、いつも自問自答してた」と真剣に悩んだ程ですから、相当深い傷を負ったのでしょう。
結局、これまで色々お世話になった方々や応援してくれるファンに応えなければと、日本人横綱の責任感で相撲を続けることを選択しました。
もし、先代師匠の鳴戸親方がご存命されてて「徹底的に治せばいいんだ」と強く諭されれば稀勢の里も心が楽になり、しっかり治療に専念して本来の強さを取り戻せたかも知れません。

会見で涙ながらに「怪我の前の自分に戻ることが出来なかった」と発言した裏には、満身創痍の中で実力を発揮出来ず、独り葛藤し続けた筆舌に尽くしがたい苦労があったことでしょう。
とても悔しかったでしょうね。
それを不器用さ故の無駄な苦労と言う方もいるかも知れません。

僕はむしろそんな彼の愚直さ、感謝と慈悲の気持ちに溢れた一途さに大いに共鳴します。
他の横綱を寄せ付けない圧倒的な人気は、そんな人間味に溢れた生真面目さがにじみ出るお人柄によると思います。
相撲通の紺野美沙子が"綱が似合う美しい力士"と称賛していましたが、ほんとうに品のある横綱だったと思います。

格差社会で人々の心が疲弊している世の中にあって、不器用ながらも自分らしく振る舞い通した苦労人の姿に、日本人伝統の男の美学を感じました。

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「一片の悔いもありません」と言い切った引退会見後の彼の晴れ晴れとした顔を見ると、「怪我と向き合いながら良く頑張りましたね、お疲れ様でした」と心から労りの言葉をかけてあげたいです。
引退を惜しむより、今は重責で心ここに在らずのうつろな稀勢の里をもう見なくて済むという安堵の気持ちで一杯です。

次にファンが見たいのは、荒磯親方として奥様(女将さん)を娶り、親方として部屋を興して後進を指導して強い日本人力士を育てる姿でしょう。

御活躍をお祈りします。

by nigi-style | 2019-01-25 07:38 | 生き方考え方 | Comments(0)